20年もの間、真面目にガソリンスタンドで働いて来た、ツイてないおじさん(フアン・ビジェガス)が、突然の解雇をきっかけに世間の冷たい風にさらされてしまった。再就職先も見つからず、住まいもなくしたフアンは、娘夫婦の家で肩身の狭い日々を送っていた。そんなある日、人助けのお礼に一匹の白い大型犬「ボンボン」をなかば強引に贈られてしまう。家に戻ると案の定、家族の大反対が待っていた。仕方なく、ボンボンを車の助手席に乗せ、あてのない旅に出るフアンだったが、その犬との出会いを境に、少しずつ幸せを呼び寄せていくアルゼンチン発の、ラテン版「わらしべ長者」のような、心温まる大人のおとぎ話。
監督は「エバースマイル、ニュージャージー」のカルロス・ソリン。主人公の男性をはじめ、登場人物のほとんどは演技未経験者が起用されています。撮影はすべてアルゼンチンの南部、広大な自然を有するパタゴニアで行なわれました。失業率が高く、貧困という厳しい現実がありながらも、金銭だけでは計り知れない精神的な豊かさがここにあります。どうにかなるさというラテン的なポジティブさで人間本来のたくましさを感じさせてくれます。主人公に扮するのはファン・ビジェガス自身。リアリティある演出がしたかった監督が実際にガレージで20年間まじめに勤務している彼をスカウト。見事スクリーンデビューを果たしました。ほかにもドックトレーナー役のワルテルはアニマルコーディネーターだったり、それぞれが本人役で演技を越えた演技を見せています。
いつものように、予備知識なくこの映画を見始めました。きっと、エンディングの想像がついてしまう、犬と人間の「愛」を大袈裟に描いている、ありがちな物語なんだろうな〜っと思って見始めたら、、、違いました!もっともっと素敵な、そして現実離れし過ぎていない、あったか〜い気持ちになる映画でした!
先ず、主人公のオジさんの「目」に私の心は釘付けになってしまったのです。「え!?これは演技!?まさか、演技で出せるようなモノじゃない!この瞳の輝き、純粋さは!この人、俳優さんなのかな?」と思ってあとで見たら、やっぱり素人さん!ソリン監督の製作会社の近くの駐車場に20年間勤務していた、普通のオジさんでした。
「このやさしそう〜なオジさん、目が全てを物語っている。目だけで語れる!」なんだか分からないけど、彼の目、表情を見ているだけで泣けてきてしまったのです。多くの苦難があっただろうに、、、でも決して人を恨んだり、悪に走らず、純粋に良い心を保って、真面目にコツコツと生きている、、、そんな姿に感動してしまいました。少年のような美しい目を持つ彼を守ってあげたい、助けてあげたい、なんていう私の母性本能もくすぐられてしまいました。オジさんは、この映画の撮影後、駐車場の仕事に復帰したそうです。
他の出演者も俳優さんではありませんでした。非常にユニークなキャスト編成になっています。監督は、こう言っています。「実在の人々、実際の場所、『本物の光』とともに仕事をすることが、人為的で巧みな操作をしたり、嘘をつくなどといった機会を減らし、映画においては不可避的に潜在する操作や偽りを少なくすると思っている。」私もいつも日々の生活のなかで、偽りや作り物ではなく、「本物」を求めています。「本物」に出逢うと本当に心から幸せを感じ、感謝します。
この映画のストーリーが他とちょっと違うところは、悪人が出てこないところ。みんな癖はあり、お金もなかったりするのですが、善人なんです。それから犬に不自然な演技をさせていないので、ありのままの姿で写っているのです。それがまたリアルで、自然な表情だからこそ、多くを語っていました。人間と犬の本当の関係性が率直に描かれている、、、そんな感じです。でも、なんだか「え〜!これで映画、終わっちゃうの〜?」という終わり方で、もっともっとお話が続くのに〜〜!という感じでした。でも、そこはあえて観る側の想像に任せて、このお話はもっともっと続きます、、、という監督の狙いなのかもしれません。
アルゼンチンの格差・貧困社会。でもそこには確かに大自然があり、人々や動物が生き、愛があり、生に満ちた美しい世界が存在していました。うわ〜私、フアン・ビジェガスさんの大ファンになっちゃった!大好きだな〜ああいう美しいひと!
PS 音楽もまた最高!!!
三村 奈々恵
データ
公開日: 製作年: 製作国: ジャンル: 公式サイト:
2007年4月14日 2004年 アルゼンチン ドラマ http://www.bombon-movie.com/
キャスト&スタッフ
監督: 製作: 共同製作: 原案: 脚本: 撮影: 美術監督: 編集: 音楽: 出演:
カルロス・ソリン オスカール・クラメル ホセ・マリア・モラレス ウーゴ・シグマン カルロス・ソリン カルロス・ソリン サルバドール・ロセッリ サンティアゴ・カロリ ウーゴ・コラス マルガリータ・フシド モハメド・ラヒド ニコラス・ソリン フアン・ビジェガス /フアン・ビジェガス
1997年、国立音楽大学を首席で卒業し、武岡賞受賞。 その後米国ボストンに渡り、ボストン音楽院で修士号を取得する。学生時代より国際コンクールで優勝を重ね、その卓越したテクニックと詩情豊かで ダイナミックなサウンドが評価され、史上3人目の「アロージ賞」を受賞。26歳の若さでバークリー音楽院講師を4年間務めた。現在東京在住。 趣味: 音楽鑑賞、映画鑑賞、読書、旅行、テニス 好きなもの: 音楽、芸術、文化、自然、子供、動物、 スペイン&中米のアート、イスラム建築